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橋本税理士・行政書士事務所

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建設業の経営分析

【安全性分析】短期的な支払能力を示す流動性

企業の財務上の安全性は、資金の流動性と資本構造の健全性によって測定されます。

流動性とは、短期的な支払能力をいい、債務に対する支払手段の保有状況をあらわします。

流動性の分析としては、支払能力の程度を分析する関係比率分析、資金の余裕度を分析する保有月数分析、支払資金に対して圧迫要因となる特定項目の滞留状況を分析する滞留月数分析の3つに大別されます。

これらの分析は、基本的には貸借対照表の流動資産と流動負債のバランスをみて行っていくことになります。

ここでは、企業財務の流動性に関する分析手法について解説してまいります。

支払能力を分析する関係比率分析

関係比率分析とは、支払能力の程度を分析するもので、流動比率、当座比率、営業キャッシュ・フロー対流動負債比率、未成工事収支比率、立替工事高比率、流動負債比率により分析します。

流動比率

建設業における流動比率は、下記の算式により計算します。

流動比率=(流動資産-未成工事支出金)÷(流動負債-未成工事受入金)×100

流動比率は、短期的な支払能力をあらわす指標になります。

なお、一般的に流動比率の計算は「流動資産÷流動負債×100」により計算します。
しかし、建設業においては、未成工事の収支である未成工事支出金と未成工事受入金のバランスは独自に分析し、流動比率の計算においてはこれらを除いて分析するのが通常です。

流動比率は200%以上が理想と言われております。100%台であればまだよいと言えますが、100%を下回るようであれば、流動資産を増やすか流動負債を減らすための打開策が必要になります。

建設業情報管理センターのデータによると、平成26年度における建設業全体の流動比率は303.67%となっております。

当座比率

建設業における当座比率は、下記の算式により計算します。

当座比率=当座資産÷(流動負債-未成工事受入金)×100

当座資産とは、流動資産の中でも特に換金性の高いものをいい、現金、預金、受取手形、完成工事未収入金、短期貸付金、未収入金などが該当します。

よって、当座比率は、より短期的な支払能力をあらわす指標になります。

なお、当座比率は100%以上が理想と言われております。

建設業情報管理センターのデータによると、平成26年度における建設業全体の完成工事高総利益率は268.77%となっております。

営業キャッシュ・フロー対流動負債比率

営業キャッシュ・フロー対流動負債比率は、下記の算式により計算します。

営業キャッシュ・フロー対流動負債比率=営業キャッシュ・フロー÷流動負債×100

営業キャッシュ・フロー対流動負債比率とは、流動負債に対して営業上どれだけ現金を稼いだかをあらわす指標になります。

外部からの資金調達を除いて、企業内部の営業活動によりどれだけ資金を稼いで流動負債の返済に回したかを示すことにより、営業活動の流動債務返済能力を判断することができます。

この比率は、40%以上であれば健全と言われております。

未成工事収支比率

未成工事収支比率は、下記の算式により計算します。

未成工事収支比率=未成工事受入金÷未成工事支出金×100

未成工事収支比率とは、流動比率の計算において計算から除いた未成工事受入金と未成工事支出金のバランスを計算します。

未成工事収支比率が100%以上であれば、請負工事に関して資金負担はないわけですから、現在進行中の工事に対する支払能力は十分ということになります。

この比率は工事関係に限った資金繰りの指標になりますので、100%以上であったとしても、工事原価に算入されない(販管費に算入される)人件費などの固定費の支払いもあることを念頭に置かなければなりません。

そのため、流動比率など他の指標を参照しながらこの指標を分析するのが重要になります。

立替工事高比率

立替工事高比率は、下記の算式により計算します。

立替工事高比率=(受取手形+完成工事未収入金+未成工事支出金-未成工事受入金)÷(完成工事高+未成工事支出金)×100

未成工事収支比率は、現在進行中の工事に関する資金繰りを分析するものでしたが、立替工事高比率は、すでに完了した工事も含めた工事関係の資金繰りをあらわす指標になります。

この比率が高いほど、工事関係の資金繰りが滞っていることになります。

建設業情報管理センターのデータによると、平成26年度における建設業全体の立替工事高比率は12.34%となっております。

流動負債比率

流動負債比率は、下記の算式により計算します。

流動負債比率=(流動負債-未成工事受入金)÷自己資本×100

流動負債比率とは、流動負債を担保する自己資本の有高をあらわす指標になります。

建設業は、自己資本に比べて負債、特に流動負債が大きい産業になりますので、他業種と比較すると流動負債比率は低い傾向にあります。

資金の余裕度を分析する資金保有月数分析

資金保有月数分析とは、資金の余裕度を分析するもので、運転資本保有月数、現金預金手持月数により分析します。

運転資本保有月数

運転資本保有月数は、下記の算式により計算します。

運転資本保有月数=(流動資産-流動負債)÷(完成工事高÷12)

運転資本とは、企業の経常的な経営活動を円滑に遂行するために必要な資金をいい、財務分析においては、流動資産から流動負債を差し引いた正味の運転資本を用います。

運転資本保有月数は、正味運転資本が月商の何か月分かという計算になりますが、支払能力をみる上での一応の目安として考えていただければ結構です。

建設業情報管理センターのデータによると、平成26年度における建設業全体の運転資本保有月数は2.24月となっております。

現金預金手持月数

現金預金手持月数は、下記の算式により計算します。

現金預金手持月数=現金預金÷(完成工事高÷12)

現金預金手持月数は、運転資本よりも確実な支払手段である現金預金の手持の程度をあらわす指標になります。現金預金が月商の何か月分かという計算になります。

なお、定期預金が借入金の担保になっている場合など、現金預金が自由に使えないこともありますが、その場合にはこの指標は実態とかけ離れてしまうことになってしまいます。

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代表者

橋本 匡貴
(はしもと まさき)
  • 税理士、行政書士
  • 山梨県大月市出身
  • 東京都豊島区在住