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建設業の経営分析
損益分岐点とは、売上から原価や費用を差し引いた場合に利益が0円になるときの売上の額をいいます。
損益分岐点を把握することで、現状の売上にどれだけの余裕があるのかということや、目標とする利益を達成するにはどれだけの売上を確保すればよいのかということを知ることができます。
建設業においては、個々の受注工事においてどれだけの売上を確保すればよいのかを知ることができる上、企業全体の利益計画を立てる上でも役立ちます。
ここでは、損益分岐点の計算方法とその活用方法についてご説明いたします。
損益分岐点を計算する上では、原価や費用を変動費と固定費に分ける必要があります。
変動費とは、売上の増減に比例して発生する費用をいいます。
たとえば、工事を下請けに出す場合の外注費については、売上が上がれば上がるほど大きくなりますので、変動費として考えます。
固定費とは、売上が上がっても上がらなくても必ず発生する費用をいいます。
たとえば、本社の家賃は売上に関係なく毎月必ず発生するものですから、固定費として考えます。
建設業における変動費と固定費の分け方としては、原価をすべて変動費として考えて、販売費及び一般管理費を固定費として考えるのが一般的です。
実際には、原価の中にも現場に携わる社員の人件費など固定費として考えるべきものが含まれている場合もありますが、簡便的に売上に直接対応する原価をすべて変動費としてとらえてしまうことが多いです。
損益分岐点売上高とは、利益が0円になる場合の売上高をいいます。
利益が0円になるということは、計算式としては下記のようになります。
売上高-変動費(原価)-固定費(販管費)=0円
上記の算式を変換していくと、損益分岐点売上高は下記の算式により求まります。
損益分岐点売上高=固定費÷(1-変動費率)
※変動費率=変動費÷売上高
ちなみに、「1-変動費率」を限界利益率といいます。
たとえば、下記の事例で考えてみます。
完成工事高 | 20,000円 |
完成工事原価(変動費) | 16,000円 |
完成工事総利益 | 4,000円 |
販売費及び一般管理費(固定費) | 3,000円 |
営業利益 | 1,000円 |
この場合の利益が0円になるときの完成工事高の計算としては、下記のとおりになります。
損益分岐点売上高=3,000円÷(1-0.8)=15,000円
※変動費率=16,000円÷20,000円=0.8
※限界利益率=1-0.8=0.2
つまり、完成工事高を15,000円確保すれば損益としてはトントンになるということになります。本当にそうなるのかを念のため計算してみます。
変動費の計算は「売上高×変動費率」により計算します。
固定費は売上が変わっても変わりませんので、同額の3,000円です。
完成工事高 | 15,000円 |
完成工事原価(変動費) 15,000円×0.8 | 12,000円 |
完成工事総利益 | 3,000円 |
販売費及び一般管理費(固定費) | 3,000円 |
営業利益 | 0円 |
ということで、完成工事高が15,000円になれば、利益が0円になることが確認できました。
損益分岐点売上高を活用することで、目標利益を達成するためにいくらの売上を上げればよいのかを把握したり、損益分岐点売上高に対して現在どのくらい余裕があるのかを把握したりすることができます。
以下、損益分岐点を活用方法を紹介していきます。
損益分岐点の活用により、目標利益を達成するための目標売上高を計算することが可能です。
これにより、短期的な利益計画を行うことができます。
目標売上高は、下記の算式により計算します。
目標売上高=(固定費+目標利益)÷限界利益率
先ほどの事例において、利益3,000円を目標とした場合の目標売上高を計算してみます。
限界利益率は、1-0.8=0.2になりますので、目標売上高としては、
目標売上高=(3,000円+3,000円)÷0.2=30,000円
となります。損益計算書で表すと下記のとおりになります。
完成工事高 | 30,000円 |
完成工事原価(変動費) 30,000円×0.8 | 24,000円 |
完成工事総利益 | 6,000円 |
販売費及び一般管理費(固定費) | 3,000円 |
営業利益 | 3,000円 |
損益分岐点の活用することにより、現在の売上高が損益分岐点に対してどれだけ余裕があるかという安全余裕率を計算することができます。
損益分岐点より離れていれば、それだけ安全余裕があることになりますので、安全余裕率が高いほど収益性が安定していることになります。
安全余裕率の計算は、下記の算式により計算します。
安全余裕率=(実績売上高-損益分岐点売上高)÷実績売上高
先ほどの事例を再び使用します。損益分岐点売上高は15,000円です。
完成工事高 | 20,000円 |
完成工事原価(変動費) | 16,000円 |
完成工事総利益 | 4,000円 |
販売費及び一般管理費(固定費) | 3,000円 |
営業利益 | 1,000円 |
この場合の安全余裕率は、下記のとおりになります。
安全余裕率=(20,000円-15,000円)÷20,000円=25%
これは安全余裕率の応用になりますが、実績売上高に対する損益分岐点の高さを示す損益分岐点比率を計算することも可能です。
損益分岐点比率の求め方は、下記のとおりになります。
損益分岐点比率=1-安全余裕率
先ほどの事例でいうと、損益分岐点比率は、
損益分岐点比率=1-0.25=75%
ということになります。
ここまでの損益分岐点の計算は、すべて営業利益をもとに求めてきましたが、建設業においては資金調達の重要性が高く支払利息の負担が大きくなることが多いことから、経常利益をもとに損益分岐点を計算するのが一般的です。
営業外損益のうち支払利息については、固定費として考えます。
それ以外の営業外損益は変動費として考えます。
つまり、支払利息以外の営業外費用が営業外収益より大きければ、その差額を変動費にプラスし、逆に小さければ、その差額を変動費からマイナスします。
よって、経常利益をベースとして損益分岐点の計算式を見直すと下記のとおりになります。
たとえば、下記の事例の損益分岐点売上高を求めてみます。
完成工事高 | 20,000円 | |
完成工事原価(変動費) | 16,000円 | |
完成工事総利益 | 4,000円 | |
販売費及び一般管理費(固定費) | 3,000円 | |
営業利益 | 1,000円 | |
営業外収益 | 1,000円 | |
営業外費用 | 支払利息 | 1,000円 |
上記以外 | 500円 | |
経常利益 | 500円 |
この場合、支払利息以外の営業外費用(500円)が営業外収益(1,000円)を下回っていますので、その差額500円を変動費からマイナスします。
そして、支払利息は固定費として考えますので、固定費にプラスします。
つまり、変動費と固定費は下記のとおりになります。
変動費=16,000円-500円=15,500円
固定費=3,000円+1,000円=4,000円
よって、損益分岐点売上高としては、
損益分岐点売上高=4,000円÷(1-0.775)=17,777円
※変動費率=15,500円÷20,000円=0.775
ということになります。
以上、ここまで4回にわたって収益性分析の手法についてご紹介いたしました。
収益性の分析は、自社の収益獲得力を分析することで、現状の問題点や課題の発見を見出すことにつながり、将来の利益計画を立てる上でも役立ちます。
会社の現状把握や今後の成長のために、収益性分析を役立ててみてはいかがでしょうか。
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